はじめに

  
世に商用のレセコン, 電子カルテはあまた出回っていますが, 他人が作ったシステムは, 実際に使ってみると使いにくいと感じる点が出てきます。自作の原点は, 自分の環境に最適なレセコン-電子カルテシステムを構築することにあります。苦労も多いのですが, 日々改良して磨き上げてゆく芸術品のような趣があります。Filemaker Pro(FMP: ファイルメーカープロ)は MacでもWindowsでも動くDataBaseソフトです。最新versionは10です。FMPは初心者でもとりつきやすく, レセコンのような複雑なシステムでも作成できる機能を十分に有しています。

私は2003年ころにFMP v5, v6で作成した自作レセコンのプロトタイプ(原型)を自分のHPに公表したのですが, その後v7への移行を試みるも, 意外にそのハードルが高く, HPもいったん閉鎖しました。最近やっとv8.5での運用を実現できましたので, このようなHPの再開を思いついた次第です。このサイトでは, それらの自作のためのprototype1, Prototype2を提示しています。 自作の参考にしていただけると幸いです。このprototype2では電子レセプト作成のためのFileも作成してみました。使用の概略をMovieにも してみました。

当院ではFilemakerで 日々の窓口計算, レセプト作成, 電子カルテシステムを作り, 約10年にわたって稼働させています。現在, レセプト提出は電算化(電算化レセプト, 磁気レセプト, デジタルレセプト, 電子レセプト)したものをオンライン請求しています(ただし,これを義務化することには反対です, この作業を全医療機関に課すのは行政の横暴です。希望者だけが利用すればよいと思っています)。


レセプトを電算化するための作業は増えましたが, 紙に印刷する大変な作業を省けることは大きなメリットです。また, 紙レセプトに必要な診療項目ごとの小計とか, 総括表も不要です。はなから, 紙レセプトとして出力しないなら, ソフト作成作業も随分軽減できるはずです。またオンライン請求してみると分かりますが, レセプト記述に誤りがあると, 送付先のサーバーコンピュータから, その誤りを指摘した"返事"がほぼ同時に返ってきます。いったん請求を取りやめて修正して再度請求すればよいわけです。これはFloppy Diskで提出する場合より, 格段のメリットです。自作にとってこのオンライン請求は実に好都合です。レセプト自作の敷居は随分低くなったと感じています。

レセコンと電子カルテの開発を技術の難易度, 費やす時間という点で比較すれば, おおざっぱに言って, レセコン8: 電子カルテ2くらいになると思います。もっとも, 電子カルテも診療支援という観点から, 極めればいくらでも手間がかかりますが, それは使いやすさ, という域を超えるものではありません。一方,レセコンは, それによって, 受診者から診療代を徴収し, 月末にはレセプトを作成して保険者に支払いを請求しなければなりません。それは医業経営の生命線です。正確に,すばやく仕事をこなすことが要求されます し, 2年ごとの保険ルール改訂にもすばやく対応させねばなりません。

電子カルテは紙カルテのように単純テキストの記載を基本とすべき, と考えています。それを見て, 病歴, 病名, 診療行為, 処方などがすべてレセコン上に再現できればよいわけです。またカルテは連続して保存しなければなりませんので, 年々容量が大きくなりますし, それを扱うデータベースソフトにも負担がかかってきます。その意味でも単純テキストにしておくほうが有利だと考えます。ただし, 診療科目によっては, 特殊な記載が必要なことは当然だと思います。そのあたりは臨機応変の対処しかないでしょう。

Prototype2では電子カルテFileも追加しました。そこではカルテの指示をいかに効率よくレセコンに伝えるかという点に重点を置いています。 Filemakerでは工夫すれば, ボタン一つでカルテの指示をそのまま,瞬時にレセコンに伝えることができます。既製のレセコン, 例えば, ORCA(日医標準レセプト)はよくできたレセコンソフトですが, それを外部の電子カルテソフトと連携させるにはCLAIM規格に沿ってデータのやりとりをする方法しかありません。しかしそれを使いこなすには素人の域を 超えた知識を要求されます。また, 二つの異なるシステムを連携させるのは, スピード, メンテの容易さ, 不測のトラブルなどの点で不利であろうと推測します。その意味でレセコン-電子カルテをひとつのソフトで作成することは重要だと考えています。既存のレセ コンを使う場合は, そのメンテが不要という大きなメリットがあるわけですが, レセコンに"手を入れる"ことができなければ , 電子カルテとの連携に大きな差が出ます。実際, これは事務作業のスピード化の点で重要です。 医師の診療画面からボタン一つで, その指示がレセコンに伝わって, レセコン画面を操作することなく瞬時に窓口計算, 処方箋発行まで自動作業ができるなら, レセコンを操作するスタッフは不要になります(ちなみに当院では レセコン専用スタッフはいません)。

さらに, 電子カルテに関しては技術的問題以外に, 厚労省の要求する, 真正性, 見読性, 保存性を確保しなければなりません。特に真正性に関しては, 厳格に保持しようとすると, 使い勝手のわるい電子カルテになってしまいます。これは本当に悩ましい問題です。

レセコン自作にあたって, 人が作ったFilemakerのレセコンを自分用に手直しして利用するのが, もっとも手っ取り早いように感じますが, これはまず, うまくゆかないと思います。実際に人が作ったソフトを解析してみれば分かりますが, 分からせようと思って作られたもの以外は "何が何だかわからない"の連続です。自分の作ったソフトでも時間が経つとそうなのですから, 人のソフトは言わずもがな, です。自分で一から作るしかないのです。電子カルテをお使いになっておられる方も多いと思いますが, 診療中に急に動かなくなったら慌てます。1分でも長く感じます。それが, レセコン+ 電子カルテ両方止まったら, パニックです。その不具合の内容も毎回さまざまです。レセプト作成中の不具合にも焦ります。マシンのみならず, ソフトのField定義, Script定義の隅々まで理解できないと解決にはなりません。しかし, 本当はFilemakerによるレセコン作りはとても楽しいです。 いったん始めるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。レセコン作りはどんなゲームより熱くさせてくれるエンドレス アドベンチャー ゲームかもしれません。